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(1)『ステンレス』ってなあに?鉄は、錆びます。鉄の錆びは、鉄と酸素が結びついて「酸化鉄」が発生することを言います。 鉄にクロムを混ぜると、鉄が酸化する前にクロムが酸化し、表面に酸化クロムの膜ができます。 (クロムは鉄より酸素に結びやすい特徴があります) この膜は、無色透明でとても薄い膜です。肉眼では識別できません。 (クロム酸化物を主成分とする0.005μm 程度の極めて薄い膜) ※1μm(マイクロメートル)=1/1,000mm 0.005μm=5/1,000,000mm さらに、この膜は化学的に安定していて、とても強固です。 また、酸素を通さないので錆びの発生を防ぎます。 この、酸化クロムの膜で表面が保護されている状態を「不働態化している」と言いいます。 (合金表面に不働態被膜(ふどうたいひまく)と呼ばれる被膜ができます) このような特性を生かして、鉄にクロムあるいはクロムとニッケル等を添加した合金のことをステンレスと言います。 鉄にクロムを添加した合金を作ると、この被膜がステンレスの表面を覆い、錆びにくくなります。 この不働態被膜は加工・切断などでキズついても、クロムが適量であれば空気中の酸素と結合してすぐ再生します。 ただし、この膜を再生するときにステンレス内部のクロムを使用するため、含有率は低くなっていきます。 ステンレスは、含まれる金属の割合で様々な特性のステンレスができます。 |
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(2)『SUS304』ってなあに?最も代表的なステンレス鋼です。「18-8ステンレス」と呼ばれたりもします。オーステナイト系ステンレスと呼ばれ、 「72%の鉄(Fe)」 「18%以上のクローム(Cr)」 「8%以上のニッケル(Ni)」 「2%の微量成分」で構成されています。 耐食性に優れ、機械的性質も良好です。 家庭用品から工業用品まで巾広く利用されています。 個溶化熱処理状態では非磁性ですが、強い加工により弱い磁性をもつようになります。 (個溶化熱処理:鉄鋼を充分に加熱して合金成分を固体に溶け込ませ(固溶)、 その後冷却する処理です。この処理は、硬度を高めるために行います。) (参考) SUS とは、 Steel Use Stainless の頭文字を取ったものです。 |
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(3)『SUS304とSUS304Lの違い』ってなあに?「SUS304」と「SUS304L」は、耐食性に影響するクロム(Cr)やニッケル(Ni)の含有量は同じですが、炭素(C)の含有量が異なります。SUS304は、炭素(C)が0.03%~0.08%含まれています。 SUS304Lは、炭素(C)が0.03%以下になります。 SUS304等のステンレスは、素材メーカから出荷される段階で、炭素(C)濃度が均一な状態に調整されています。 この状態は、ステンレスの耐食性が最もよい状態になります。 しかし、ステンレスが加工される段階や、使用段階で熱処理を受けると、ステンレス内の炭素(C)が、耐食性を示す成分であるクロム(Cr)と結合します。 結合した「クロム炭化物」は、ステンレスの結晶粒界に連続的に生成し、その付近にクロム(Cr)の欠乏した耐食性の劣った領域が生じます。 このような状態は、ステンレス内の炭素(C)濃度に依存されます。 SUS304より炭素(C)濃度を低下させたSUS304Lは、相対的にこの領域が生じにくい材料です。 このため、腐食の発生を回避するため、SUS304Lを使用する場合があります。 |
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(4)『SUS304とSUS316の違い』ってなあに?オーステナイト系の代表的なステンレスには、SUS304とSUS316があります。この両鋼種は、成分にモリブデン(Mo)が含まれるか、含まれないかの差があります。 SUS304にはモリブデン(Mo)が含まれていません。 これに対し、SUS316には約2%のモリブデン(Mo)が含まれています。 引張強度などの機械的特性には、大きな差はありません。 両鋼種の主な差は、耐食性にあります。 ステンレスの耐食性は、表面に生成する「不働態皮膜」と呼ばれる薄い皮膜によります。 ステンレスの場合、この不働態皮膜を形成する主な成分は、クロム(Cr)とモリブデン(Mo)になります。 これらの濃度が高いほど、不働態皮膜が「ち密」で「耐食性が良好」とされています。 腐食を示す環境の範囲が、SUS304に比較してSUS316の方が広く、耐食性の良い材料と言えます。 しかし、モリブデン(Mo)は酸化性酸環境で耐食性が劣るので、 強酸化性溶液では、 SUS304とSUS316の耐食性が逆転する場合もあります。 |
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(5)『マルテンサイト,フェライト,オーステナイト』ってなあに?金属組織の分類になります。クロム系ステンレスは、マルテンサイト組織を有するものとフェライト系組織を有するもがあります。 それぞれマルテンサイト系ステンレス,フェライト系ステンレスを呼ばれます。 クロム・ニッケル系ステンレスは、一般的にオーステナイト組織を有しており、オーステナイト系ステンレスと呼ばれています。 結晶構造の違いによって磁気的性質が変わります。 体心立方格子(または一部にこれを含む)のフェライト系,マルテンサイト系,2相系ステンレスは、強磁性で磁石によくつきます。 磁性の有無は結晶構造によるものになります。 ・マルテンサイト系ステンレス 焼き入れによって硬化します。 すべての状態で磁性があります。 代表鋼種・・・SUS420J2 ・フェライト系ステンレス 焼き入れによって硬化しません。 すべての状態で磁性があります。 代表鋼種・・・SUS430 ・オーステナイト系ステンレス 焼き入れによって硬化しません。 加工硬化が著しいのでバネや強靭鋼としても使用できます。 個溶化熱処理状態では非磁性ですが、強い加工により弱い磁性をもつようになります。 代表鋼種・・・SUS304,SUS301,SUS304L,SUS316 ・析出硬化系ステンレス 焼き入れによって硬化できないオーステナイト系ステンレスを熱処理によって硬化できるようにした鋼種です。 耐食性はオーステナイト系に及びませんが、クロム系より優れています。 代表鋼種・・・SUS631 |
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(6)『硬さと硬さ記号』ってなあに?JIS(日本工業規格)で規格されたものです。 硬さと記号の対応は、下記の通りです。(*)引張強さ,バネ限界値 ともに ”単位:N/㎜2” になります。 (*)引張強さ,バネ限界値 ともに ”単位:N/㎜2” になります。 (*)引張強さ,バネ限界値 ともに ”単位:N/㎜2” になります。
***** JIS G4313 硬度(HV)(HV:ビッカース硬さ記号[JIS Z 2244] ) ***** |
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(7)『クロム(Cr)の働き』ってなあに?
クロム(Cr)の働きは、「さびを防ぐ」です。 |
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(8)『ステンレスの種類』ってなあに?
18-0ステンレス(SUS430) |
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(9)『ステンレスの成分』ってなあに?下記の図の通りです。鉄に様々な金属を混ぜるとそれぞれ特徴のあるステンレスになります。 |
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(10)『ミリ単重』ってなあに?
例えば、ミリ単重が 1Kg として考えてみます。 コイルの単重を算出する計算ができます。 (1) コイル質量(重量/kg),コイル巾(mm)の各項目に半角数値を入力して下さい。 |
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(11)『比重計算』ってなあに?
ここでは、ステンレス板の場合で説明します。 ステンレスバネのフラット材(板)の質量(重量:KG)を算出する計算ができます。(1)板厚,枚数の各項目に半角数値を入力して下さい。(比重:7.93)(2)入力後、[計算実行]を押して下さい。計算結果(質量:KG)が表示されます。 (3)[クリア」を押すと、数値がリセットされます。 |
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(12)『CSP、CP』ってなあに?
CSP 製造方法を表す符号です。 ばね用冷間圧延鋼帯のことです。 |
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(13)『横曲り』ってなあに?
下図のように、長さ1mに対する横曲りの数値のことです。 ちょっと役立つ「計算式」もご覧下さい。 (13)『横曲りの数値を求める計算式』
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(14)『エッジの種類』ってなあに?
製品のエッジの仕上には、次の5種類があります。(イメージ図になります)
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(15)『HV (ビッカース) と HRC (ロックウエルC)』ってなあに?
下記の表は、「HVから見たHRCの近似値の数値」と「HRCから見たHVの近似値の数値」を表しています。 |
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(16)『バリ』 『カール』ってなあに? どうしてできるの?
コイルの切断 と シャーリングの切断 に分けてお話しします。
最初は、ステンレスコイル(バネ)での切断(スリット)上がりの形状についてです。
図1は、切断機を正面から見たイメージ図です。 図2は、切断機を横から見たイメージ図です。
図3は、切断機から製品が出てきたイメージ図です。(分かりやすくバリを強調しています)
このように、切断加工はカッター組み(図1)を行い、材料を通す(図2)と材料が上向きと下向きに出てきます。
図4は、正面から見た「バリ上」と「バリ下」のイメージ図です。(分かりやすくバリを強調しています)
用語の使用例
次に、シャーリングでの切断上がりの形状についてです。
図5は、コイルでのバリのイメージ図です。 図6は、シャーリングでのバリのイメージ図です。
シャーリング機は、上刃の両サイドでは角度が付いているため、片端から刃が落ちてくる構造になっています。
「シャーリング機の動作(図7)」が、どのような切り方になるかを図8~図11で説明させていただきます。
図8は、上刃と下刃とで材料(板材)を押さえているイメージになります。板厚によって、クリアランスは変わります。
図9は、上刃が下がり材料が切断(せん断)されるイメージ図です。
図10は、切断されるとき、材料内の上下にき裂が入る様子のイメージ図です。
図11は、き裂により材料が切断(破断)された様子のイメージ図です。
図12は、切断面のイメージ図になります。左上から「だれ」「せん断面」「破断面」「バリ」になります。右は、上から「バリ」「破断面」「せん断面」「だれ」になります。 |
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(17)『SUS304 2B 定尺板の重量と板厚公差』ってなあに?
幅1m,長さ2mの板を「メーター板(ばん)」と称しています。
SUS304 2B メーター板(幅:1,000mm 長さ:2,000mm) 機械的性質 SUS304 2B メーター板(幅:1,000mm 長さ:2,000mm) 板厚公差,1枚の重量 |
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(18)『ミルシート』ってなあに?
ミルシートは、鋼材の材質を証明する書類のことです。 |
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(19)『SUS316とSUS316Lの違い』ってなあに?
SUS316,SUS316L共に、SUS304に比べると耐食性に優れています。
C:炭素 |
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(20)『 SK 』ってなあに?SKは、炭素工具鋼の略称です。主な用途は、バネ,ゼンマイ,メリヤス針,自動車のホーン,測量用のメジャー,座金,各種ばねなどに使用されています。 SKの多くは、加工前又は加工後に熱処理を行うのが一般的な使い方です。 加工性、焼き入れ、製品性能、さらにステンレスより価格が安いので広く使用されています。 SK(炭素工具鋼)は、Steelの "S" ,工具の "K" SKS(合金工具鋼)は、Steelの "S" ,工具の "K" ,Specialの "S" のように英語と日本語の混じった略称になっています。 SKS材は、SK材にタングステン、モリブデン、クローム等の元素を添付して性能を高めた工具鋼になります。 そのため、SK材に比べて焼き入れ硬度や耐摩耗性に優れています。 SKS材の代わりにSK材を使用できるかは、製作した部品に要求される耐摩耗性等により判断します。 そのため、負荷のかかる部分で使用するならば、SK材を使用せずSKS材を使用する方が無難と思われます。 *炭素工具鋼鋼材の種類と記号及び化学成分(単位:%)
表示記号の変遷 現行の表示記号は、C(炭素)の含有量の%で表されます。(2000年に改訂) SK2 → SK120 SK3 → SK105 SK4 → SK95 SK5 → SK85 SK6 → SK75 SK7 → SK65 |
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(21)『 RoHS,REACH,MSDS,MSDS plus 』ってなあに?RoHS(ローズ)は、「電気・電子機器における特定有害物の使用制限」についての欧州連合(EU)による指令です。指令内容では、特定有害物の含有率を「指定の数値以下」にする必要があります。下記がその物質と指定された数値になります。 鉛:1,000ppm以下 水銀:1,000ppm以下 カドミウム:1,000ppm以下 六価クロム:1,000ppm以下 ポリ臭化ビフェニル(PBB):1,000ppm以下 ポリ臭化ジフェニテール(PBDE):1,000ppm以下 (参考:欧州連合における「指令(しれい)」は、参加加盟国に対してある目的を達成することを求めます。しかし、その方法は定めておりません。そのため、「規制」のようにそれ自体が執行力を持つものとは異なります。) REACH(リーチ)は、「欧州連合(EU)内で年間1トン以上製造・輸入する事業者」に対する化学物質の使用状況の登録義務を課する規制です。 MSDS(製品安全データシート)は、指令・規制とは直接の関係はありません。主に環境負荷物質や特定の化学物質の使用・含有の情報開示とその製品の取扱いに対しての注意が記入してある書類です。 例えば、 ・製品の取扱いにおいて、飲み込んだ場合は・・・ ・製品の取扱いにおいて、火器に近づけない・・・ ・製品の取扱いにおいて、××の物質と化学反応を起こすので一緒に使用しない・・・ などが書かれています。 また、MSDSには、製品を製造した企業の情報も必須項目になります。 MSDS plus(製品安全データシート プラス)は、JAMP(ジョイント アークティクル マネジメント 推進協議会)が推奨する製品含有化学物質情報を伝達するための基本的な情報伝達シートになります。 この情報伝達シートには、 ・製品中の含まれる成分を管理対象とする「法規等の名称」 ・管理対象となる物質の「含有の有無」「物資名称」「CAS番号」「濃度」など を記載し、お客様に伝達するために使用されます。 このJAMP(ジョイント アークティクル マネジメント 推進協議会)は、アーティクル(部品や成形品等の別称)が含有する化学物質等の情報を適切に管理しています。 また、サプライチェーン(原材料・部品調達から製造・在庫管理・販売・配送までの製品全体の流れ)の中で円滑に開示・伝達するための具体的な仕組みを作り、普及させることが、産業競争力の向上に不可欠であるとの認識に立ち、この理念に賛同する17の企業が発起人となって、2006年9月に業界横断の活動推進主体として発足した団体です。 情報伝達シートのサンプルは、下記のものになります。 |
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(22)『 ビニール貼り(表面保護シート) 』ってなあに?ビニール貼り(表面保護シート)は、素材のキズ防止のために利用するものです。素材(ステンレスコイル,板など)の表面に貼り合わせてからプレス加工などの加工を行います。 加工時の表面保護(キズ防止)として利用されています。 加工後は、表面保護シートを取り除きます。 下記は、代表的な表面保護シートです。 SG:塩化ビニールを主体とした表面保護焼付塗料です。 焼付後はフィルム状になり、簡単にはがすことが出来ます。 厚さは、30~50ミクロンです。 SPV:ポリ塩化ビニル系のシートに特殊な粘着剤を塗ったものです。 塗ったあとは、「表面保護粘着シート」になります。 シートを素材(ステンレス等)に貼って使用します。 はがすのは簡単で、素材への影響はありません。 厚さは、120ミクロン位です。 SPH:ポリエチレン系のシートに特殊な粘着剤を塗ったものです。 塗ったあとは、「表面保護粘着シート」になります。 シートを素材(ステンレス等)に貼って使用します。 はがすのは簡単で、素材への影響はありません。 厚さは、60ミクロン位です。 |
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(23)『 エッチング 』ってなあに?エッチングとは、金属面を化学的に腐食させ、材料の一部を除去する加工方法の一種です。具体的には、金属材料に製品を形取ったエッチング原版パターンを転写し、薬液による腐食溶解を行い、化学的に加工することを言います。 一般的な機械加工やプレスでの加工歪みやバリは発生しません。そのためフラットな外観を保つことができます。 また、加工の最終工程に洗浄工程があり、クリーンな製品となる特徴があります。下図は、そのイメージ図になります。 (おおざっぱですが、こんな感じです。) |
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(24)『 ロール目 』ってなあに?ステンレス鋼帯には「圧延方向」があります。これは「ロール目」とも呼ばれています。精密加工では、この「ロール目」を考慮しなければ、曲げ加工に影響する場合があります。 曲げ加工での方向で強くなる方向と弱くなる方向があるからです。そのため曲げる方向を考えた取り方が必要になります。 この取り方を間違えると、割れ(クラック)」が発生する場合があります。 上図のような曲げ加工品を製造する場合、ロール目に対して、「直角取り」では曲げ部分に割れ(クラック)が生じる場合があります。 これに対して、「ロール目方向(平行)取り」または「斜め取り」では、割れ(クラック)の恐れは軽減されます。 極端な例ですが、ビニールひもが縦方向に簡単にさけるようなイメージです。ビニールひもは横方向の裂けません (ステンレス鋼帯では、決してこのようにさけることはありませんので・・・) |